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ILH代表黒部のブログ

「海賊と呼ばれた男」の時代と英語教育

2013年度の本屋大賞で1位になった百田尚樹著書「海賊と呼ばれた男」が売れている。日本の石油ビジネスのパイオニアとして時代を生き抜いた主人公と、その会社(本書では国岡商店となっている)が、敗戦後、日本の石油エネルギーを押さえ込もうとした巨大国際石油資本と戦い、日本の経済再生に向けて頑張った男達の、実話に基づく話である。
舞台は昭和22年から28年、対戦に破れた日本はアメリカのGHQによってすべてが統制されていた時代である。この時代、日本人は敗戦痛手から立ち直れないなか、国の舵取りはすべてGHQにゆだねられていたと言っても過言ではない。石油市場も資本力を持たない日本の石油会社と、アメリカの大手石油会社が提携することで、将来、日本の石油市場は外資が支配する設計図が描かれていた。そんな中、国岡商店の代表以下、社員が一丸となって外資の日本市場乗っ取りに立ち向かう。本書の中では、英語で外国人と交渉する場面がいくつも出てくるが、この交渉をなんとか成功させたい、相手に日本の現状と将来のあり方を伝えたい、なんとか理解してほしいという思いがストーリーの中からとても良く伝わってくる。昭和22年頃は英会話学校と言えば、それこそGHQにコネを作るしかなく、それぞれ必死の思いでGHQの外国人達に食いついて覚えた英語は、今私たちが「英会話」と呼んでいる物に比べるとずっと比重が重いものに思えてならない。まさに生きるための「英会話」だったのだろう。戦後60年以上たった今、本来なら日本人はもっと英会話ができて当然なのだが現状はどうだろう。英会話学校も英語教材も街に溢れているが、豊かになったのは日本人の英会話ではなく、学習を売る人々だはないだろうか。戦時中に日本は敵国の言語英語をシャットアウトした。戦争に負けて日本語の一部を捨てた。今私たちは日本の将来に向けてどんな選択をしなければならないのか、特に子供を持つ親には真剣に考えてもらいたい課題である。

ロサンゼルスの幼稚園

5月末から6月始めにかけてロサンゼルスの幼稚園を視察した。今後ランゲージ・ハウスが海外から外国人保育士を受け入れるという計画があり、その一つとしてタイプの異なった幼稚園を訪問した。アメリカでは、日本でいう年少、年中を受けいれるPreschoolと、年長から7歳ぐらいでを受け入れるKindergartenに分けられる。日本と同じように公立と私立があるが、私立幼稚園の月謝は日本に比べるとかなり高い。人件費は日本とさほど変わらないが、園がかけなけらばいけない保険が高く、またもろもろの税金も高いというのが理由らしい。そこで私立の幼稚園は延長保育のモーニング版を取り入れているところが多く、朝7:00から夕方18:00までという、日本の保育園のようなサービスをしている。ただし有料である。
 アメリカの幼稚園に入るとアメリカを感じる。まるで1週間かたづけていない子供部屋みたいな部屋で、子供たちが思い思いに遊んでいる。保育士もアート感覚の鋭いのが多いようで、自転車の車輪を利用したシャンデリア、木の枝を利用したアートスペース、ヒッピーが着ているような布を木につけてファンタジー感覚いっぱいの屋外空間など、私も一日ぐらいこんな空間で遊びたいと思うような工夫がそこかしこに見られる。日本の幼稚園に比べて時間がもっとたくさんあってゆっくり流れている、そこに子供たちと保育士が生活しているという表現が一番近いだろうか。
 学習面では、子供たちの感性を育むプログラムに多くの時間が取られているが、『本を読む」習慣を育む時間はどの園でも重要とされている。まずは本を自分の手にとってみる、本をさわってみる、開いてみる、見てみる、何が書いてあるのか保育士に聞いてみるといった、自発的に本に親しんでいく試みがなされている。私がニューヨークで子育てをしていたころも本や読書にかかわるいろいろなイベントがたくさんあった。学校が出版元とジョイントし、新刊発表会を学校で行い、保護者が本を購入し、それを学校の図書室に寄付するといったことはかなり一般的に行われていた。また幼いころから図書館で本を借りるシステムを学習し、買う前に図書館を利用する習慣をつけるといったこともよく行われていた。
 この週末、家族で図書館でまったりと過ごすのも梅雨時の素敵なファミリータイムになるかもしれない。

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