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ILH代表黒部のブログ

フランスの英語教育事情




 フランスの南に位置するトウールーズは航空機で有名なエアバス社がある。またグローバル企業の誘致も活発に行っている。そんな環境を背景にこのバイリンガルスクールができた。設立当初は幼稚園のみであったが、数年後に卒園児を受け入れる小学校を徐々に作り始め、現在はプライマリースクールと呼ばれる6歳から12歳までのフランス語と英語のバイリンガルスクールを運営している。
システムはランゲージ・ハウスとは違い、週の3日はフランス語、2日は英語というように分けられている。実はランゲージ・ハウスもこの方法を短期間試みたこともある。しかし母国語の影響が強くなりすぎ、子供達が言語を切り替えるのが難しいという結果から取り入れていない。実際ここでの子供達の通常会話はフランス語であった。
フランスでは英語の先生は9割がイギリス人でアメリカ人は珍しい。国同士が近いこともあるが、格式張った教育が主流のフランスでは、アメリカ的なカジュアリティーを教育に取り入れることは考えてはいないようだ。
一方バイリンガルスクールではないが英語の授業を積極的に取り入れている学校も訪問した。いわゆるミッションスクールであるが、私立であっても授業料の取り方がユニークで神の思召しに従って経済的に大変な家族からは多くを徴収せず、余裕のある家族からはしっかりと貰う。これが可能な背景には、全教師の給料は行政から賄われている。日本の認可保育の制度にも似ているが、プログラムなどは自由に構成していて学校独自の方針で運営されている点が違う。英語の授業も公立学校は週に2時間のみなのに対して毎日行われる。音楽の授業もイギリス人が行っていて全て英語である。プログラムは全て校長によって導入が決められる。ただ英語による音楽プログラムはアメリカ人の行うようなクリエイティブなものではなく、生徒全員が同じように先生の指示に従って動く。今回の訪問で感じたのだが、フランスの教育は教師が主導となって生徒は「いい子であるべき」クラスが良しとされるような保守的面を感じた。実際ニューヨークや東京で見たフランス公認学校でも、ディベイトなどで個々が意見を言うようなクラスではなく、先生の話しを聞くことが重要視されている。そのせいか全員で英語を話す時はできても、1人で発表となると難しいという場面が見られた。
フランスの教育委員会曰く、英語教育に関しては成功とは程遠いシステムが今も動いている。しかし日本はこの失敗システムとほぼ同じものを2020年度から小学校の導入しようとしている。日本人の担任による、日本人が選ぶ英語のテキストによって、毎日行われないプログラムがそれである。フランスではこのプログラムが導入されてから数年経つ。子供達に英語習得のプログレスが見られないまま改良はおこなわれていない。よその国で成功しなかったことが日本で成功するとは決して思わないのだが、せめて他国での失敗を教訓としてくれることを強く望む。同時にランゲージのような民間が強い意識を持って日本の英語教育に貢献することの大切さを再認識する。
ところで1つフランスの学校から学びたいことがある。給食である。私立学校での情景なので一般的ではないかもしれないが、サラダの前菜から始まり、魚のメインディッシュ、なんとチーズが出てヨーグルトのデザート、パンは勿論バゲットというメニューが3歳児から提供される。さらに驚くのは3歳児でもナプキンで口元を拭くことを心得ている。日本食が世界遺産になったのだから、フランススタイルとは言わなくても日本の美しい食文化を給食を通して教えられるような学校が日本にも必要と考える。これは食育というより文化教育である。

フランスの幼稚園訪問記




 この11月、フランスの南トウールーズにあるバイリンガル幼稚園と、英語教育を重視している小学校を見学した。目的は2019年に予定しているフレンチプレスクール(フランス語バイリンガル保育園)の開園に伴う現地でのバイリンガル保育の現状と、保育士の労働条件、そして同県にある教育委員会での英語担当者とのミーティングだった。まず何故フランス語保育園なのかを説明する。

 ランゲージ・ハウスバイリンガル幼稚園がスタートして来年で9年目になる。今やっとランゲージバイリンガルメソッドの形が見えてきている。これを英語から他言語に変換した時、これからの日本に必要な言語は何かと考えた。現実だけに目を向ければ今日本に多く滞在している中国語や韓国語、ベトナム語といった言葉を話す人たちをターゲットするべきかもしれない。一方でランゲージ・ハウスには多くのフランス人が働いている。ほとんどが男性なのだが皆それぞれに日本人の奥さんやガールフレンドがいる。中には子供のいるスタッフもいて家庭でのバイリンガル教育に熱心である。彼らと話していると日本ではフランス人とのカップルが増えているという。確かに仕事以外でもこの組み合わせのカップルにはよく会う。フランスでも何人かのカップルに出会った。この現実を裏付けるためにフランス大使館や東京にあるフランス商工会議所などでマーケティングをした。現在フランス政府公認の学校は板橋区にある。また北区に新しくフランス語幼稚園が開園されるらしい。しかしどこもバイリンガルではなくフランス語のみの教育である。私が手掛けたいのはフランス語と日本語の基本バイリンガルに英語教育を挟むサンドイッチ教育である。学校を作るなら夢がないと作れない。こうしようああしようと描けなければ学校はできない。

 フランスの学校は3歳〜6歳がキンダー、そこから12歳までが小学校となる。0〜3歳までのナーサリーは有料であるが、幼稚園、小学校は基本的に無料である。私立校やインターナショナルスクール(現地ではアメリカンスクールかブリティッシュスクールに分かれる)は法外な学費をとるが、語学をしっかりさせたければ選択肢としては適切かと思う。何故なら小学校での英語教育は将来的に期待できないのが現状である。公立の小学校では3年生から週に2時間、フランス人教師によって英語が教えられている。しかしフランス人の児童に適した教材を使用しているわけでもなく、教師の技量に左右される。テキストブックはイギリスの市販のものがほとんどで日本の英語塾のものとあまり変わりはない。教育委員会でのミーティングも話しが英語になるとあまり積極的ではない。





曰く「フランス人は美しいフランス語を話すことが何よりも大切です。これなくしての英語教育はありません。」と言い切るが、このセリフは何処かの国でも聞いたような気がする。確かにフランス語は美しい言葉で、フランス人のプライドは言葉にありといっても過言ではない。しかし社会は刻々と変わり、EUの中でも英語が下手くそな国の一つに数えられているフランスはその現場を直視すべきである。またそれ以上に心配なのは我が国日本である。すでにフランスで失敗している小学校英語教育と同じものをこれから小学校に導入しようとしている。一体この根拠はなんなのだと問いたい。(続く)

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