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ILH代表黒部のブログ

海外渡航至難の年

 8月航空運賃が一斉に上がった。お金にはとてもシビアーな義理息子が3年
ぶりにシカゴに帰ることになって格安航空運賃を探していたら、片道最低価格
で19万、往復だと34万はすると言っているので、そんなバカな、節約家の
あなたが格安運賃を探せないなんておかしいわよ、とは言って見たものの、ど
のサイトを見ても30万以上する。29万というのがあったが、なんと乗りか
え3回で離陸から目的地到着まで30時間もかかる。航空券そのものが高級品
になってしまったようで、このような金額では学生はおろか、ファミリーで海
外旅行もままならない。おまけにこの円安で海外での宿泊や買い物も節約覚悟
で行かないと大変なことになる。そして私がもっとも懸念していることが、夏
休みを利用して海外経験をしたいと計画していた若者が、その予定を諦めなけ
ればならないことになってしまう現実である。実際そのような人たちが私の周
りにもたくさんいる。コロナ禍海外渡航を我慢してきた人たちにとっては、
羽田や成田でのPCR検査がなくなり、最悪自粛だったホテルでの10日間の
監禁がなくなって、やっと海外に行けると思っていたら、この航空運賃の値上
がりである。
 私が学生の頃、海外旅行は高嶺の花だった。まして海外留学に至っては頭の
良い、そして英語の話せる人たちだけに与えられる特権みたいなものだった。
大学生の頃アメリカのアイビーリーグに憧れてハーバードやイエールを目指す
クラスメイトがいたが、彼女たちがターゲットにしていたのは給費留学だった
。私も含めた一般学生は飲み会や部活、バイトが学生生活の主な部分を占めて
いたが、留学志願者はそんなものはどうでもよく、給費留学試験に合格するこ
とだけを目指していた。出せるところから航空代、宿泊代、学費、滞在費を出
してもらい夢を実現すると言った強い目標設定には周りが近寄れないすごさも
あった。
 さて、今でも給費留学の種類はたくさんあるが、先日ラジオを聞いていたら
コロナの2年間を過ごした留学希望の学生に変化が見られるという。どのよう
な変化かというと、2年間に及ぶ日本の鎖国政策にも似た渡航、入国制限で学
生は諦めモードに入ってしまい、海外そのものに興味がなくなってしまった。
あるいは諦めてしまった学生が増えているという。給費留学の倍率が過去に
10として、今は2ぐらいになってしまった。このような現象は日本の将来に
とっては全く良くない。若いうちの海外体験は将来大きな糧となってその人の
役に立つ。しかし国内でくすぶっていては世界は狭いままで、10年後20年
後の社会の変化についていけない。
私は日本という国が自国の若者への教育、特に英語教育を甘く見ていることで
起こる日本人の就職難を懸念している。英語の話せない日本人を雇用するより
、英語、日本語、中国語、あるいはベトナム語、タイ語など、3カ国以上の言
葉を話す外国人を選ぶようになる。その前兆がコンビニなどで見られる。コン
ビニで働いている外国人のほとんどが悠長な日本を話す。またコミュニケーシ
ョンができるぐらいの英語も話す。今後このような外国人の活躍は他業界に広
がっていくことは間違いない。道路工事の現状が一つの例だ。以前はスコップ
を持って穴掘りの仕事だけを担当していた外国人が、今では解体のシャベルカ
ーを操ったり、測量をしたり、パソコンを持ってシステム環境を検査したりと
仕事の幅がぐっと広くなっている。またソフト関連でも外国人が作る人事管理
システムや健康管理システムも日本国内で広く出回っている。このように見て
いくと日本人が外国に出向かなくても、外国人との競争はすでに始まっていて
、将来はよほどの特殊技能がない限り、日本語だけ話せる日本人の職場は限ら
れたものになってしまう現実がそこまで来ていると考える。
 もし日本の政府がこのような将来を憂い、日本人の若者たちが外国人と競争
していける力をつけるために、学生たちの航空運賃を半額にするとか、Go to
travelの海外バージョンを作るとか、英検やTOEICのような点数やレベルを図る
ものではなく、もっと具体的なコミュニケーション能力を育成できるようなテ
ストシステムを作り、奨学金を与えるとかを考えるべきではないかと思う。
 日本の若者が「しかたがないから日本に住む」というような諦めの意識を持
つことだけは回避したい。

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