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ILH代表黒部のブログ

タイ事情
先々週、ビルディングメインテナンスサービスの企業から依頼で、久しぶりに通訳の仕事を受けた。場所はタイ、バンコック、引き続く日本企業の進出にそなえて、現地にあるビルメインテナンス企業との技術人材、ひいては共同出資による現地法人設立を目的とする。私は法律のことはまったくの度素人だが、人と人、とくに日本人と外国人をつなぎ合わせるスキルは持ちあわせているらしいので、サラリーマンをしていた頃から、会社の提携業務にはよく引き出され、私も日本のPRをかねて必要以上に頑張ってしまう。

私が滞在した3日間、丁度現地では政治集会、デモが行われているときで、外務省通達では、あまり行かない方がいい外国のカテゴリーに入っていた。夜中に降り立った空港も警備が厳しく、ホテルから迎えに来たタクシーの運転手も現政権に対する不満を興奮しながら話していた。ビルを指差しては「あれもこれも汚職ビルだよ。」「首相はチーティング(ごまかし)ばかりする。」と言っていた。

確かにタイの政情不安定は街を歩いていてもよくわかる。まず物価がおそろしくあがった。それと平行して乞食が増えた。以前道で出会うのは托鉢のお坊さんだったが、今回は乞食の姿が目についた。裏町の屋台は相変わらずの安売りをしているが、表通りにあるショッピングモールの商品は、日本人の私でもためらってしまうほどに値段が高い。例えばGAPなどは明らかに日本より高い。いったい誰が買うのか知らないが、スカイトレイン(公共交通電車)に乗って
くる一般庶民のものではないのは確かである。

私が思うに、タイはアンバランスなグローバル社会が進行している。これはタイに限らずアジアの国々に言えることだが、ある一部の富裕層のみがグローバル社会の市場原理を甘受でき、それ以外の人々は、グローバル化した町並みだけを眺めて暮らす一般の人たちだ。これらの人たちにとってはグローバル社会なんていうのは生活の足しにもならない、まったく異次元社会である。ただ、ある光景を見たときに、近い将来、この異次元を現実として受け止める人たちが多くなるのだと思った。それは学校である。タイにはインターナショナルスクールが多いが、一般の学校も英語にはかなりの力を入れている。私が見たのは町外れにある、一見塾のような学校だった。ところが生徒は英語で話している。タイアクセントのある非常にわかりにくい英語だが、あきらかに英語である。小学生と思われるグループだったが、10年後、20年後、日本人と国際社会で戦ったときに、その勝敗はあきらかであるような、ふとそんな気持ちにさせる光景だった。未だにアジアを後進国だと思っている日本人がたくさんいる現実、一度ノックアウトされないと現実は見えてこないかもしれない。

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