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ILH代表黒部のブログ

黒部さん家の教育事情 1

黒部さん家の教育事情

ニューヨークに住んでいた頃ジャーナリストをしていた。特に教育関係は日系新聞とのタイアップでいくつかの取材記事を担当していた。今でも忘れられない取材の一つに公立学校の給食風景がある。ニューヨーク市の公立学校は一部をのぞいて程度のほどはよくない。ママたちの会話でも「PS6はいいけど、13には行かせられないわ。」とか「やっぱり息子を私立に送りたいから働きにでることにしたわ。」とかがよく聞かれる。そんな公立学校なので、校長というのがお役所の役人みたいで、なんというのか権力とかマスコミに弱い。私の取材した学校もピカピカの背広にちょっと黄ばんだようなワイシャツを着て、胸のポケットから真っ赤なハンカチがのぞいているような、校長先生というよりマフィアの子分といった風情の校長だった。一応学校の説明を聞いた後、私のリクエストで給食風景を取材することになった。アメリカの小学校は給食、カフェテリアフッド、自前のお弁当に分かれる。給食と言っても日本のように栄養バランスの取れた野菜満載のものではなく、肉、ポテト、ライス、ピザ、など油と炭水化物が多い。最近になってこんな給食が体に悪いということが分かって着たらしく、必ず野菜サラダを食べる事を義務づけているというが、このサラダにしろレタス、キュウリ、トマトと簡単なもので、これだけ食べて野菜というならおめでたいというような代物である。
さて、この日のメニューはフライドチキン。ところがこれを食べる道具がスプークと呼ばれる、スプーンの先がフォークみたいに割れているもので、これを使ってチキンを食べようとすると、フォークの部分がうまく肉にささらないので、チキンがすべって皿から床に転げ落ちる。私が数えただけでも10羽のチキンが床に着地、ぶざまな姿をさらしていた。そしてそれ以上に私が驚いたことは、校長がマイクロホンをにぎりしめ、チキンが床に転がる度に「シット、シット」とわめいていたことである。本人はマイクに声が通っているということを忘れているらしく、「シット」が部屋中にこだましている。が校長は気がついていない。生徒たちも校長先生が「シット」と平気で言っているのだから「オーシット」と後に続く。これがそのうち大合唱になって教室は大混乱となる。中にはわざとチキンを落とす生徒もいてこれも「シット」床に落ちたチキンをスプークで拾おうとするとまたもチキンが転がって「シット」もうめちゃくちゃである。このシット、日本語に直すと「くそ」とか「くそったれ!」とかになる。ただこれを学校の校長がマイクに向かってどなってしまうとどうなるか。
ニューヨークの親たちが公立に子供を送りたくない理由の一つがここにあるかもしれない。(つづく)

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